忍者ブログ
ごめん、やっぱ忘れたかも
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


 私は彼女に憧れていた。
 彼女が太陽の光なら私はその影で、彼女が朝なら私は夜。彼女が手に入れられるものの中で私に手に入れられないものは、沢山あった。同じ容姿をしてるのに、同じモノを持っているのに、私はいつも選ばれなくて、彼女はいつも選ばれる。黒い感情が奥底から湧き上がってくる。

 私は彼女が死んで、悲しいはずなのに。彼女が死んで寂しいはずなのに。

 どこかそれを喜んでいる私がいる。私が私でなくなりそうな自己矛盾。私は、彼女を、本当は、・・・・・・
 桃の木に近づいてみる。よりいっそう、甘い香りが鼻の奥へと広がっていく。同時に湧き上がる黒い感情も抜け落ちていく。
 そう、私は彼女とは違うのだ。姿形は同じでも私と彼女は、確実に別れた存在であることも一つの真実だ。


 花のついた木の枝を一つ折って、前挿しにする。


-大丈夫よ。

 振り返ると、笑顔で彼女が立っている。けれどどこかそれはぼんやりとしていて今にも消えそうだ。

「姉さんっ」

 駆け寄って手を伸ばすが、風とともにその幻像が散っていく。暖かい彼女の声だけが優しく語りかけてくる。

-あなたはきっと乗り越えられるから。時間はかかるけど、きっと大丈夫。

 根拠のないことをこうもぬけぬけというのがいかにも姉らしい。でも、それで救われた気がする。

「うん、頑張ってみるよ」

 風が吹いて、今度こそ完全に甘い香りとともに、彼女の声も消えてしまった。髪に挿した桃の花だけがいつまでも、仄かに香っていた。

(END4. NORMAL END)
PR

Comment
Name
Title
Mail
URL
Comment
Pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
[260] [289] [286] [285] [155] [154] [153] [152] [151] [150] [149
«  Back :   HOME   : Next  »
時計
カレンダー
02 2024/03 04
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カウンター
Since 2008/9/26
コメントありがとうございます
[12/30 Assi]
[07/25 daiz]
[07/16 tone]
[07/07 (-ω-。)]
[06/26 tone]
―Alliance―
ブログ内検索
Profile
筆者:tone
性別:♂
為人:学生で眼鏡で所謂KYのくせに心はソーダ硝子

でもめげない…多分

ブログ案内はコチラ
なんか最近迷走中
メールフォーム
全ての入力項目が必須です
忍者ブログ [PR]