ごめん、やっぱ忘れたかも
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「散歩にでも行くか。よく分からんし、気晴らしにはなるだろう」
公園まで歩いてみることにした。
時刻は夕方。横断歩道を渡るところで、川野に会った。
「おお、川野じゃないか」
「ん?あれっ、羽山君だ。めずらしいね、こんな時間に」
川野。クラスメイトにしてクラスの中でも目立たない部類に入る彼女だが、なぜかよく羽山とはウマが合って面識があるのだった。
「あれ、お前学校は?」
「そういう羽山君こそ」
「おれはいつものことだからいいんだよ」
「このさぼり魔め。眠れないんだったらおとなしく学校行って勉強しなよ」
「まあね。でもそれも面倒臭いというか。昼寝しようと思ってたんだけど、いざ横になるとこれが眠くなくなるんだよな」
「あっ、それ分かるかもー」
くすくすと笑って「それで散歩でもしてるの?」と川野は尋ねた。
「まあ、そんなところ」
「今日は正しい時間に来たんだね」
「・・・ああ」
「思い出した?」
「いや、それは分からないんだけれども、なんていうか今日はここに来なくちゃいけない気がしたというか・・・」
そう言って横断歩道を渡ろうとする羽山の手を引っ張る。
見て、と指をさす。
「あれ、赤?今青じゃなかった?」
「寝ぼけてるの?」
と言いつつ微かに笑う顔はどこかやはり恐怖を感じるものを持っていた。
「この前、ここ最近で初めて眠くなったっていったよね?」
「ああ」
「その時間覚えてる?」
はて、いつだったか。
「夜じゃなかったと思うけれど・・・昼の三時くらい?」
「15:40分のあたりよ」
「なんでお前がそんなに詳しく知ってるんだよ。羽山マニアですか」
「・・・・・・」
うつむいたまま川野は黙り込んでいる。何やら様子がおかしい。
「あと、10分ってところか」
「ん?何がだ?」
「15:40分までの時間」
そして、
そういう川野の声はいつになく羽山の耳に浸透してきて、
「私たちが事故に遭遇する時間。そしてあなたが死ぬ時間。私が死ぬ時間。そのタイムリミットが、あと10分」
「は?」
目の前の彼女は何を言ってるんだ。おれが死んだ?こいつも死んだ?どういうことだ?だって川野も俺も今こうしてここに、
「一日がね、終わらないの」
そう言って川野は横断歩道を見つめている。自分の死に場所を懐かしんでいるように見えた。
「一日が終わるでしょ。そして朝起きたらまた同じ一日が始まってるの。当然でしょう、だって私たちには明日がないんだから」
「ちょっと待てよ。状況を整理させてくれ。俺たちが死んだでもなぜかこうして生きてる。そして同じ一日を繰り返してる。そう言いたいのか、お前は」
「ちょっと違うね。私たちは生きてない。ずっと夢を見ているのよ。これから10分後、いえ何年前かしら・・・あの時私たちは死にたくなかったんでしょうね。その気持ちが届いたのかしら、死ぬ瞬間のちょっと前、同じ時間にずっと捕らわれてしまった」
「はっ、そんな・・・そんなことが」
現に起きてるじゃない。そう言って川野は自嘲気味に笑う。それに、
「それになぜか羽山君は気付いてないみたいだし。なぜか私だけはこのことを覚えてるし。この話を羽山君に話したことだってあるけれど、羽山君、全然信じてくれなかったし。この違いは何なんだろうって思ったわ」
「そうだよ・・・なんでお前だけが覚えてるんだよ」
「飽きたの」
とても疲れた声。
「もう同じ一日を繰り返すこと、飽きたのよ。私だけでも抜け出せないかって思ってたけど、無理みたい。一回私一人でここに来てわざわざ事故に会ってみてもダメだった」
つまり。
本当にこの悪夢を抜け出したくば、もう一度あの状況を再現するべきなのだと、彼女は言っている。
「そう。そういうわけだから、私はあと・・・5分後かしら。死ぬわ。あなたはどうするの、羽山君?」
残された時間はもうそんなに残っていない。
「眠りたいんでしょう、羽山君?」
1.もっと別の方法があるんじゃないのか?
2.本当に眠れるんだろうな?
公園まで歩いてみることにした。
時刻は夕方。横断歩道を渡るところで、川野に会った。
「おお、川野じゃないか」
「ん?あれっ、羽山君だ。めずらしいね、こんな時間に」
川野。クラスメイトにしてクラスの中でも目立たない部類に入る彼女だが、なぜかよく羽山とはウマが合って面識があるのだった。
「あれ、お前学校は?」
「そういう羽山君こそ」
「おれはいつものことだからいいんだよ」
「このさぼり魔め。眠れないんだったらおとなしく学校行って勉強しなよ」
「まあね。でもそれも面倒臭いというか。昼寝しようと思ってたんだけど、いざ横になるとこれが眠くなくなるんだよな」
「あっ、それ分かるかもー」
くすくすと笑って「それで散歩でもしてるの?」と川野は尋ねた。
「まあ、そんなところ」
「今日は正しい時間に来たんだね」
「・・・ああ」
「思い出した?」
「いや、それは分からないんだけれども、なんていうか今日はここに来なくちゃいけない気がしたというか・・・」
そう言って横断歩道を渡ろうとする羽山の手を引っ張る。
見て、と指をさす。
「あれ、赤?今青じゃなかった?」
「寝ぼけてるの?」
と言いつつ微かに笑う顔はどこかやはり恐怖を感じるものを持っていた。
「この前、ここ最近で初めて眠くなったっていったよね?」
「ああ」
「その時間覚えてる?」
はて、いつだったか。
「夜じゃなかったと思うけれど・・・昼の三時くらい?」
「15:40分のあたりよ」
「なんでお前がそんなに詳しく知ってるんだよ。羽山マニアですか」
「・・・・・・」
うつむいたまま川野は黙り込んでいる。何やら様子がおかしい。
「あと、10分ってところか」
「ん?何がだ?」
「15:40分までの時間」
そして、
そういう川野の声はいつになく羽山の耳に浸透してきて、
「私たちが事故に遭遇する時間。そしてあなたが死ぬ時間。私が死ぬ時間。そのタイムリミットが、あと10分」
「は?」
目の前の彼女は何を言ってるんだ。おれが死んだ?こいつも死んだ?どういうことだ?だって川野も俺も今こうしてここに、
「一日がね、終わらないの」
そう言って川野は横断歩道を見つめている。自分の死に場所を懐かしんでいるように見えた。
「一日が終わるでしょ。そして朝起きたらまた同じ一日が始まってるの。当然でしょう、だって私たちには明日がないんだから」
「ちょっと待てよ。状況を整理させてくれ。俺たちが死んだでもなぜかこうして生きてる。そして同じ一日を繰り返してる。そう言いたいのか、お前は」
「ちょっと違うね。私たちは生きてない。ずっと夢を見ているのよ。これから10分後、いえ何年前かしら・・・あの時私たちは死にたくなかったんでしょうね。その気持ちが届いたのかしら、死ぬ瞬間のちょっと前、同じ時間にずっと捕らわれてしまった」
「はっ、そんな・・・そんなことが」
現に起きてるじゃない。そう言って川野は自嘲気味に笑う。それに、
「それになぜか羽山君は気付いてないみたいだし。なぜか私だけはこのことを覚えてるし。この話を羽山君に話したことだってあるけれど、羽山君、全然信じてくれなかったし。この違いは何なんだろうって思ったわ」
「そうだよ・・・なんでお前だけが覚えてるんだよ」
「飽きたの」
とても疲れた声。
「もう同じ一日を繰り返すこと、飽きたのよ。私だけでも抜け出せないかって思ってたけど、無理みたい。一回私一人でここに来てわざわざ事故に会ってみてもダメだった」
つまり。
本当にこの悪夢を抜け出したくば、もう一度あの状況を再現するべきなのだと、彼女は言っている。
「そう。そういうわけだから、私はあと・・・5分後かしら。死ぬわ。あなたはどうするの、羽山君?」
残された時間はもうそんなに残っていない。
「眠りたいんでしょう、羽山君?」
1.もっと別の方法があるんじゃないのか?
2.本当に眠れるんだろうな?
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