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「学校へ行くか」
とりあえず家でゴロゴロしても眠れないし、さぼり癖は付いているが、たまには学校へ行くのもいいだろう。もしかしたら退屈な授業聞いて眠れるかもしれないし。
「出席を取るぞー」
いつもの風景。変わり映えのしない毎日。それでも少しずつみんな歳をとっていってることに気づいていない。そんな朝の風景。
つまらない。授業もいつも通りでつまらない。退屈な休憩時間。だから羽山は寝たふりだけでもしておくことにする。もしかしたらこのまま眠れるかもしれないという淡い期待を抱きながら。
そうして机に突っ伏す羽山にさっそく後ろから声がかかる。
「お、羽山君が寝てる。めずらしい」
川野だ。声だけでもわかるが、そもそもこんなやつに話しかけるやつなんてのは限られている。
「・・・いやね、とりあえず目だけでもつぶってみようかなと思って」
「いやそれだけじゃなくて学校に来てること自体が珍しいんだけどね」
「ずいぶんとひどい言われようだな。ま、当たってるから仕方がないんだけど」
机に突っ伏したまましゃべる。
「それはさておき、今日のは考えたのか、考えてないのか分からない結論だね」
「まあね。原点回帰ってやつですよ」
「うわあ早くもネタ切れの予感」
「うるさいわい」
でも、と川野は羽山の前の机に座る。
「なんでそうやって眠れなくなったのか、その原因を考えようとかは思わないの?」
「・・・原因、ねえ・・・」
そもそもいつ頃からこうなったのかどうにも思い出せない。そのためにその原因をたどるのは無理な気がする。
「うーん、発想の転換っていうかなんというか。きっかけでもあればすぐに見つかりそうな気もするんだよね。人間難しい問題にぶち当たってるときほど、いったん転がると一気に解決することもあるわけだし」
「そんなきっかけがあればすぐに思い出してる気もするんだけど」
きっかけねえ。
「あ、先生きたよ」
また今回も眠れなかったね。そういって川野は自分の席に着く。
「・・・これは・・・・・・カルビン・・・」
前で黙々としゃべっている先生の話を必死にノートに書き写す生徒たち。
そうしているうちにうつらうつらと眠気が襲ってきた。
「!?」
眠いぞ。なんでだ。今まで眠くなることなんて無かったはずなのに。
―その原因を考えようとかは思わないの?―
川野の言葉が改めて耳を打つ。
「原因って・・・」
時刻は15:40分くらい。別に眠たくなってもいい時間帯ではあるのだが・・・
「羽山、どうした。そんなに先生の授業がつまらんか」
「あっ、いえすいません」
ぼんやりした思考もそれで打ち止め。眠気が吹っ飛んでしまった。
「何やってんのよ。らしくないねえ」
放課後。教室に残っているのは羽山と川野の二人だけ。他のやつらは全員部活なり、帰宅なりしてしまっている。
「聞いてくれ。珍しくさっきの授業がとてつもなく眠たかった」
「え、ほんと?おめでとう!授業中だったのが残念だったね」
「しかし原因も何もよくわからないんだけど」
「でも眠くなった。それにはやっぱり何か理由があってしかるべきだと思う」
「うーん、やっぱり分からんなあ」
「ま、落ち着いて考えてみたらいいんじゃない?最初に戻ってもう一回見つめなおしたら?」
「それこそ原点回帰じゃないか」
「そういうこと」
灯台もと暗しって言うでしょ?そういって川野は下校の準備を進める。
「ああ、なんか今日はもうあのとき以上に眠くなりそうにない気がする」
「これまでで一番ゴールに近かっただけ残念だねえ」
「あ、やっぱりそう思う?」
「うん。羽山君が眠くなるとか前代未聞過ぎるもん」
なんかひどいなその言われよう。
教室を出ていく前にいったん振り返って、
「どつぼに嵌まらないように気をつけてね」
「へいへい」
そうして、教室には羽山一人が残された。
「原因、きっかけ・・・やっぱり思いだせないな」
あと一歩が思い出せないが、ふとしたことで見つかることなんだろうと、そんな気がしてならない。
「まあ、今日はもういろいろ考えるの疲れたし、明日でいいや。明日には分かりそうな気がするし」
そうして、教室には誰もいなくなった。
repeat hologram dreams