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ごめん、やっぱ忘れたかも
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-epilogue-


春に想う




 私たちは、二人で一つ。これまでも、そしてこれからも。



 でも、私たちは二人同時には存在できない。



 私たちには平行世界を旅することができた。妹はとてもその能力のことを嬉しく思っていたが、それが世界から外れていることくらいは分かっていた。そして、あの日、彼女に会った。

「平行世界の旅行が実在してたなんて、驚きだわ」

 いきなり目の前に、長い黒髪の少女が立っていた。ブラウスから見える手は雪のように白くて病的だった。

「でも、欠陥だらけね。人間から出発する程度では、これが限界のようね。私が殺すまでもないわ」

「えっ、・・・えっ?」

 いきなりこの能力のことを言い当てられたのに動揺していたのかもしれない。何も言い出せない私を置いて彼女はなおしゃべり続ける。

「あったかもしれないことが多重に存在し続ければ、世界に小さな矛盾が起きるの。貴女達がバタフライ効果で得られる未来をたぐり寄せたなら、その歪みもいつかきっと大きなものとなって貴女達に返ってくるでしょうね。決定的な破滅と一緒にね」

 そう、だから私は、

「そう、だから今の段階では私は貴女を殺す必要が無くなったってこと。すでにもう手遅れなのよ。あなた、近いうちに死ぬわよ」

「私が、・・・死ぬ?」

「ええ、もう片方じゃなくて、確実に貴女の方が死ぬわ。私にはそれが見える」

「そんな・・・いやそうじゃないわ、ちょっと待って。今あなた、今の段階では、って」

 そんな気はしていた。私はそんなに長くは生きられないだろうって、漠然とそんなことを抱いていた。それじゃあ、あの子は?

「そうよ、私がしゃしゃり出てくる必要があるのは、貴女が妹さんに殺されたときくらいでしょうね」

「・・・それって、どういう意味?」

「能力の相互干渉。言っておくけどあなた達のソレは枠組みとしては結構大きな事象なのよね。そんなのが反発して干渉しあったら歪みがひどくなっちゃうから、その時は私が殺してあげるわ。両方ともね」

「妹は、貴女には渡さないわ。それに妹はそんなこと、絶対にしない」

「そう、それなら、その時は貴女の手で終わらせなさい」

「終わらせるって、そんな」

「できなければ、代わりに私がやるまでよ。あなたに私は止められないし、その時にあなたは生きてさえいない」

 唐突に訪れた死の宣告。でも私の命と等価値に等しいもう一つの命がある。

「・・・・・・分かったわ。でもあの子は絶対に外れたりはしないわ」

「どうだか」

 私は彼女を睨み付ける。

「じゃあ、話はあなたが殺された仮定の話になるけど。きっかけになるような物何か持ってない?」

「きっかけ?」

「そう、貴女と能力を思い出すきっかけ。それがあれば、たとえ殺されても可能性の糸を手繰って戻ってこれるわ。何か、そういうもの持ってない?」

 いわれて、私は鞄の中を開けてみる。中には昼休みと放課後に作ったばかりの万華鏡が入っていた。それを彼女に渡す。

「へえ、変わった趣味ね」

「変わってて悪かったわね」

 私はどうも彼女とは仲良くなれそうにはない。

「十分よ。じゃあこれは私の連れに渡しておくから、もし貴女が死んだときは彼に妹さんに送るように言付けておくわ」

 そう、だから私は妹に私と彼女の運命を委ねることにした。

「じゃあ、もし貴女が彼女に殺されたときに、貴女が彼女を殺せなかったときは、私が貴女の妹を必ず殺すから」

 一瞬。けれどその時私は彼女の気迫に戦慄した。そう言って彼女はそのままどこかへ消えてしまった。消える前に一つだけ尋ねてみた。

「・・・・・・あなた、いったい何者なの?」

「死神ってよく言われるわ」

 彼女は決して振り返ることはなかった。



 家に帰ると庭の隅で桃の花が咲いていた。

「あ、花が咲いてるね」

 後ろから声がする。妹もどうやら帰ってきたみたいだ。

「ちょっと、こっちに来て」

 妹を呼びながら、枝を一本折った。

「何なに、どうしたの?」

 愛すべき私の半身。彼女ならきっと正しい未来を選んでくれる。

「はい」

 彼女の髪に簪として、前挿しでつけてあげる。

「わあ、綺麗!」

 携帯のカメラモードで即席の簪を確認している。ふと、こっちを見て、

「どうしたの、なんか浮かない顔をしてるけど?」

「なんでもないわ」

 本当のことを話すことはできない。いつかこの日が未来に影響を与えるときが来るかもしれない。彼女には自分の足で歩いてほしいと思う。

 にこりと笑う彼女の笑顔に誓う。シュレディンガーの猫は、私が生かそう。
 私たちは二人で一つ。これまでも、そしてこれからも、ずっと。


/シュレディンガーの猫は、 了.
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