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ごめん、やっぱ忘れたかも
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 私はその箱を開封した。
「これ、・・・姉さんの?」

 箱の中には小さな手作りの万華鏡。間違いない。これは姉さんが作ったやつだ。彼女は万華鏡を作るのが趣味だった。何故?そう、かつて私は彼女に聞いたことがあった。

「何で万華鏡なんか作ってるの?」

「だってこれ、私たちの**に似てるでしょう?」

 いやな汗が背中を伝う。そう、彼女は私達の**に似ているって言ってた。私たちの**って何?
 もう一度見てはいけない。見たらきっと思い出してしまう。何を?何を思い出すの?姉さんの死についてはもう思い出すことは何もないじゃない。それでも震える手が止まらない。
 ゆっくりと、そして確実に私の目は鏡写しの世界をのぞき込んだ。

 そこに広がっているのは、きらきらと光る鏡に映した同じようで少し違ういくつもの世界。

「ぁっ・・・」



 それは、平行世界の旅行。



 それが、私と姉の能力。そう、私は、あのとき、彼女を突き落としていたけれど、同時に近くのファミレスで数少ない友人達とおしゃべりをしていた。
 彼女は、確かバタフライ効果って言ってただろうか。

「コンマ1秒の間でも呼吸を変えたり、躊躇したりすれば、未来に与える影響は大きく異なってしまう可能性があるわ」

 彼女を突き落としてしまった世界と踏みとどまった世界。そのどちらの世界にも干渉できる能力。シュレディンガーの猫は死んだはずだ。

「ああ、やっと思い出してくれたのね」

 振り返ると目の前に私の姿をした誰かが立っている。

「言ったわよね。ルールその3。平行世界を渡るモノは同族を殺すことができない」

 そう、私が姉を殺したとき、同時刻に姉を殺さなかったかもしれない世界がある。姉も同じ能力を持っているのならその力が相互に干渉しあって、その結末をたぐり寄せてしまう。シュレディンガーの猫は生きている。

「殺した直後に能力のことを忘れたのね。そうすることで自己防衛を働かせた。でも、あなたは思い出してしまった」

 私の姿をした誰かは優しい笑みを浮かべてゆっくりと私のもとへ歩いてくる。

「ね・・・ぇさん?」

「怖がらないで。大丈夫よ」

 ゆっくりと、抱きしめられる。けれどその抱擁には暖かさは微塵も感じられない。

「私たちは二人で一つ。どちらかが生き残ることはできないの」

 意識が急に遠くなっていく。

「そう、だからこの世界の私たちは、仲良く一緒に死にましょう?」

 彼女の声は最後まで聞き取れなかった。永遠の闇が静かに私の意識をを包んでいった。

(END.2 BADEND)
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