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ごめん、やっぱ忘れたかも
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3.
「散歩にでも行くか」

 公園まで歩いてみることにした。

 時刻は夜中。横断歩道前のコンビニの所で、川野に会った。

「おお?、誰かと思えば川野じゃないか」

「ん?あれっ、羽山君だ。めずらしいね、こんな時間に」

 川野。クラスメイトにしてクラスの中でも目立たない部類に入る彼女だが、なぜかよく羽山とはウマが合って面識があるのだった。

「まあね。そろそろ寝ようと思ってたんだけど、いざ横になるとこれが眠くなくなるんだよな」

「あっ、それ分かるかもー」

 くすくすと笑って「それで散歩でもしてるの?」と川野は尋ねた。

「まあ、そんなところ」

 ふうん、とうなずいて、




「散歩するには時間を間違ってる気もするけどね」




 じっと瞳の中を探る眼で見つめられる。時々こいつはこういう目で見てくるときがあるが、これが素なのか意図しているのかは羽山にはわからない。

「そういう川野こそ」

「ん?」

 表情を変えずに首だけ傾げる。

「こんな時間に何やってるんだよ。怪しいぞ」

「えへへ、それは秘密。女の子には秘密があったほうがいいのよ。そういうことにしときなさい」

「ふうん。そんなもんかね」

「そんなもんです」

「まあいいや、それじゃ会ったついでだし散歩一緒にどう?」

「ついでですか」

「ついでですとも」

 そういうわけで二人は近所の公園をいくつか散歩して回った。



「眠れないのはいつから?」

「うーん、いつからだろうね、よく覚えてない」

 二人は今、ブランコに乗っている。ブランコに乗ったのなんていつ以来だろうか。

「いっつも学校に目の淵に隈作ってきてるもんね」

「しょうがないじゃん。眠れないんだし。あ、そういえば川野おまえこないだ学校来てなかっただろう。おかげでこっちは相当退屈な目に合ったぞ」

「ええ、なんで私が羽山君の都合に会わせないといけないの?」

「え、いやだって暇だし。それに川野はどうせ学校にちゃんと行く奴だろ。さぼりなんてダメだぜ。まじめ君がやっちゃあ」

「まあそうなんだけどさ・・・それはそうと絶対に眠くならないの?」

「うーん、頭では眠りたいって思ってるんだけど、日付が変わるあたりにボーっとしてそれだけというか、そんな感じなんだよねいつも。色々試してみたけどどうも改善されなかったんだよね」

「大変そうね」

「まあね、でももう慣れた。今はいろいろと試すのが楽しい、そんな時期」

「楽しめなくなったら終わりね」

「さらっと怖いこと言うね」

 だって私には関係のないことだもの、そういって笑う川野にぞくりとしたものを感じる。

「それはそうと、そろそろ日が明けるけど」

「みたいだな」

 空はうっすらと明るみを帯び始めてきていた。

「結局今夜も眠れなかったね」

「川野、そういうお前こそ眠ってないぞ」

「私はいいのよ。眠りたきゃいつでも眠れるし、まだまだ若いしね」

「それもそうだな」

「それで今日はどうするの?」

「いつもと変わらないと思うよ」

 朝日が一筋山の端から差し込んでくる。

「今日も今日こそ眠れるように色々と努力するんだろうねえ」

「ふぅん。頑張って」

「まあ、飽きない程度に頑張ります」

 ぼんやりとそれを見つめながら、羽山は言った。

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