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家に帰る頃には、雲が少し薄くなって、月が見えていた。今日は満月だ。どうりでムズムズするわけだ。家の前には誰もいなかったから一応ぎりぎりセーフ。
家でびちびちと酒を飲みなおしていたら、玄関のチャイムがなった。
「?だれだろ」
覗き窓で覗いてみる。知らない女の人が立っていた。
とりあえず玄関を開けてみる。やっぱり知らない女の人がちょっと怒った顔で突っ立っている。
「あの…どちら様でしょうか?」
「カボチャ」
「は?」
「ここに、カボチャが来たでしょう?」
「?、ああ!」
さっきのアレのことか。
「いや、ここには来てないですよ。さっき道端であってそのまま少し話をしただけですけど・・・」
「くそ、遅かったか。アレ、どこ行った?」
「いや、知りませんよ。あの自称、由緒正しきカボチャはふらふらとまた何処かに彷徨いに行きました」
何か訳ありなのだろうか。
「ちなみにカボチャを見つけてどうするご予定で?」
「即、八つ裂きに決まってるじゃない」
訳ありだ。訳は訊かないほうがいいと思う。訊いたらこっちが八つ裂きにされそうだ。
「大丈夫よ、アレはそれくらいじゃ死なないから。痛がるけど、結構でたらめな構造してるのよね」
怖いからこの話はさっさと切り上げよう。
「ところで、どうしてここが分かったんですか?」
「そんなのアレの匂い辿って来たに決まってんでしょ!」
怒られた。匂いを辿ってきたって言ったし、カボチャも知ってるみたいだし、そんなことが出来るあたり、やっぱこの人も、人間じゃないのだろう。
「アンタも人間じゃないくせに、そんなことも出来ないの?」
「はぁ、まぁそうですけど」
男は少し驚いた顔で、
「どうして分かったんですか?」
「いやだから匂いで分かるでしょ、それくらい。あんた獣臭いのよ」
明日からはもっと丁寧に体を洗おう。一時間くらい洗い続けよう。
「俺は分かりませんよ」
「ふぅん、どうせ狼男かなんかでしょう?狼のくせに全く鼻も利かないなんて、ホント使えないわね、アンタ」
何で今日はこう、やたら変なのに絡まれるんだ?
「正解ですけど。でもこれは、後天的なものなんですよ。ちょっと昔色々ありまして、ね」
まぁ、あの時は生き残れただけでも良しとしてるけど。
「それにこんな所で堂々と暮らしてるなんて、ホント信じられない!死神が来たらアンタ真っ先に死ぬわよ」
「ええ、そうかもしれませんね」
女の人はとても呆れ顔をしている。
「別にそれでもいいと思うんですよ。だってこんなの知ったらみんな寄って来なくなるじゃないですか。別に取って喰ったりしないのに」
半ば投げやりな口調で、
「俺は、もしかしたら彼女に殺されたがってるのかもしれない」
「アンタ、会ったことあるの?あの死神に!よく生きてられたわね」
「ええ、まぁ。その時は見逃してもらいましたけど、次見かけたら問答無用で殺すって言われましたね」
「はぁー、信じらんないわ!それでアンタは、隠れてないでこんな所で暮らしてるって訳」
願わくば、見つけて殺してもらうために。
「……暗いわね」
「は?」
「今日は止めたっつってんのよ!あの糞カボチャ探し!」
「はぁ、そうですか。…で、代わりに何を?」
「アンタをちょっといいところに連れて行ってあげる」
「ええ!?いや、いいです。俺は今日は一人でびちびちと酒を飲むことにしてるんです」
「この私が予定変えてまで誘ってんだから、黙って付いて来なさいよ!」
「それ貴女の勝手でしょうが」
なんて俺様な女なんだ。きつく睨み返して、強く反抗の意思を示す。
「…パーティーがあるのよ」
「パーティー?」
「そう、パーティー。この町ってアレでしょ?なんか曰く付きの輩が集まりやすいでしょ?」
確かに。この町はその意味で異常だ。人間じゃなくなってここに10年は住んでいるが、その間で結構いろんなモノの噂を聞いた。
「だからね、今日この近くでパーティーがあるのよ。そういう輩が集まってのね。で、アンタをそこに連れて行く。あたしも誘われてたんだけどねぇ。あの糞カボチャの始末を優先してたのよ」
ぎりぎりと彼女の拳が握り締められる。あのカボチャ、どんだけ恨み買ってんだ?
「まぁ、それはいいとして。そういう訳で、アンタの今日の予定はこれで決まりね」
「ごめん嫌です勘弁してください」
「考え方が凝り固まったらダメなのよ。いろんな意見を聞いておくのもいいことよ。特にそういう人間じゃないヤツの考えとかね」
「そしてアンタに拒否権は、もちろん無いわ。拒否した瞬間に八つ裂きよ」
「ですよねー。はぁ、何で今日はこんなについてないんだ」
しぶしぶと外に出て玄関に鍵をかける。
「もうちょっとしゃきっとしなさいよ!今日は何の日か知ってるでしょう?」
「ハロウィンですよね」
「そう、ハロウィンよ!」
不適に笑って言う。
「今夜は、私達が、主役なの!」
女が男の右手を掴んで駆け出す。
「ちょっ」
「ほら、ぐずぐずしない!もう始まってるだろうから、飛ばすわよ!」
引っ張られて体勢が崩れたのを立ち直す時、頭上に二人を照らす満月が見えた。
「―ああ」
なんて白い。
「なんだ、結構いい男じゃないの」
男の体は月の光を浴びて、既に狼になっている。
一期一会ってこの国のコトバ、私は好きですよ
今日のところは、賛成してやるか。
「そういえば、名前聞いてなかったわね、私は*****。魔女よ。アンタは?」
「俺は―」
今宵、ヒトじゃない何かが、騒ぎ出す。
夜は、まだまだこれからだ。
(お題:満月の夜の訪問者)
続・逢魔ヶ夜 ―月下― 了.
学校から帰ってきて、一日終わるまでまだ時間あるなーって思った勢いで書いてみました
文章校正等ろくにしてない完全にやっつけです
本当は真夜中のパーティーまで繋げられたら良かったんですけど、時間的に無理でした
彼らがどういった背景で生きてきたのかは、僕にも謎なところがあります
ホント不気味な奴らです