[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
今回も気合の入ってる某同盟に触発されて
今回はあっちの企画には非参加ですが、くだらないものを作ってみましたので、暇な人はどうぞ
今回はマルチエンディング方式を採用してみた(つっても二種類しかないけど)
今年もこの季節がやってきた。いつもいつも惨めな思いをしてきた私だが、今年は違う。今年の私はなんとしても乙女の(義理)チョコを手に入れるのだ。
あれは入学式の日。遅刻しそうになって慌てて学校へ向かった私は、その途中、桜の木を眺めている彼女に出会った。
「あの、急がないと遅刻しますよ?」
「あら、もうそんな時間なんですか?ついつい綺麗なものだから見入ってしまいました」
そう言って、微笑む彼女に私の心は、打ち抜かれてしまった。いともあっさり。
結局一緒に遅刻して、先生に怒られたことは忘れられない思い出だ。
それから、乙女とはクラスは違えど、すれ違う時に会釈するくらいの関係に落ち着いた。それ以上の発展を望むには、機会に恵まれなかった。友人は機会があってもお前の根性じゃ無理だとのたまったが、けっしてそうではなかったであろうという事を、ここに明記しておく。
繰り返そう。私には機会が恵まれなかったのである。
そして、高校生活の最後を飾る今年、私はついに乙女と同じクラスになった。
これは今まで二年間必死に機会を待ち続けた私へのご褒美なのだ。このチャンスを無駄にはしない。
そうして私は、彼女と同じ委員会になれず、体育祭のフォークダンスも彼女の目の前で曲が終了し、月一の席替えでも彼女の隣の席になることは叶わなかった。
「ほれみろ。コレだからお前は機会があってもだめなんだよ」
そういう友人の顔はとてもにやついていた。
「今年こそは、彼女の義理チョコをゲットするのだ!」
「はあ、バレンタインっつっても、ただ世の中が企業に踊らされてるだけじゃんよ」
「ふふふ、甘いな」
ちっちっちと私はもったいぶって指を振る。
「企業に利用されているのならそれを更に利用してやればいいではないか!」
「・・・はぁ。つまり?」
「つまり、バレンタインに乙女が俺に振り向くようにすればいいだけのことであろう?」
「ふうん。まあ失敗に終わるだろうけど、とりあえず頑張れな」
「何言ってるんだ?お前も手伝え。と言うわけで、作戦会議だ」
そういうわけで、現在学校近くのファーストフードの中。私とその友人は、作戦会議を進行させていた。
「そういうお前はどうなのだ?」
「ん、まあ作戦は練るけどダメだろうね」
「またあのくだらんモットーに誓って動かないのか。お前にも春が来るのはまだまだ遠いな」
他力本願。それが友人の掲げる座右の銘である。実に腐っている。そういう私の座右の銘はちゃんとしたものがあるのだが友人に言わせれば、現状維持なのだそうだ。
私はそうは思ってないが、もし他の人にもそうなら、私も実に腐っているのだろう。
しかし、今年こそは違うのだ。それをコイツに思い知らしめてやると私は心に誓っている。
そんな会議の途中に私はふとそらした目を疑った。
乙女が店の中に入ってきた。
「おや、これはチャンスじゃないのかね?ミスター現状維持」
「ぐ、うむ。そうだな、そうであるな」
そうこうして、悩んでいる間にふと、乙女と目が合ってしまった。