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ごめん、やっぱ忘れたかも
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―彼の、最後の仕事もいつもと変わらないものだった―

 
 
「あれ?地図によると、確かにこの辺りのはずなんだけど…」
 夜。人通りはそろそろ少なくなってきているが、決して途絶えてはいないこの街のある教会屋根の上で、赤い服に身を包んだ男が地図と睨めっこをしている。雪が降っていて視界は少し悪いはずだが、その白い世界に全身が赤色といういかにも目立った格好をしているこの男に、何故か行き交う人々は誰も気付くことが出来ずにいる。そう、今日はクリスマス・イブ。彼こそ正真正銘のサンタクロースの一人である。
「うーん、これはやっぱり誰かに聞かないとまずいかなぁ」
 通常サンタクロースたちは、必ずと言っていいほど、高速で目的地を見つけることが出来る能力を持っている。何故ならそれが彼らの仕事に就くための絶対条件の一つだからだ。
「人に聞くなんてプライドが許さないんだけど、そうも言ってられないよなぁ」
 こと、彼はベテラン中のベテランである。そんな彼が目的地を見つけられないと言うことは、理由は二つしかない。しかしその一方の理由は今の彼にはまだ考えられないので、必然と理由は一つに絞られる。

 怪異現象。

 通常のもので対処できないものには通常でないない何かがある。こと通常でないものでも対処できないのなら、なおさらその確率は高い。
「とすると、誰かの力を借りたい所なんだけど・・・」
 と腕組みして、町全体を俯瞰する。すると、この夜の中一人で通りを歩いている少年を見つけた。
「おっ、いいね。いいもの見つけた。うん、彼にしようか」
 そう言った瞬間にサンタクロースは目的の少年の目の前に降り立っていた。


 夜の街のとある通りを少年が歩いている。視線はどこか俯きがちである。街はクリスマスで浮かれているっていうのに彼の顔は何処か浮かない表情だ。ふと、顔を上げると右手の方に綺麗にデコレーションされたクリスマスツリーが見えた。
(どうせ、今年もプレゼントなんてありゃしないんだ。)
 思わずツリーを睨みつけてしまう。親がいない彼は質素な生活を強いられているゆえ、クリスマスプレゼントなんてもらったことがなかった。無い物ねだりであることではあるが、それでも街のにぎやかな装飾を見ていると、恨めしい目を向けずに入られなかった。そんな彼がまた歩き出そうと視線を戻した時、

「こんばんは。突然だけど君にちょっと聴きたいことがあるんだよ」

 そう言って少年の目の前に赤い服を着た男がいきなり現れた。
「うわっ!?」
「いやいや、怖がらなくていいよ。私は見た目どおりのサンタクロースだよ。ちょっとプレゼントの配達先が見つからなくてね、ここなんだけど、君分かるかな?」
「サンタクロース?それならこんな所で油うってていいの?デパートとか商店街は反対方向だけど?」
「いや、だからそういう偽者じゃなくて本物のサンタクロースなんですが」
 突然目の前に現れた赤い服の男に今ひとつ警戒を解けずに少年は続ける。
「ふーん。で、そのサンタクロースが俺に何のようなわけ?」
「うん、いまいち信用されてないけどまあいいか。さっきも言ったとおり、ちょっと配達先が分からないんだ。要するに道を聞きたいんだよねえ」
 住所を聞くならば、子どもより大人の方が断然良い。しかし、彼らの存在を信じてくれる可能性が高いのはそのほとんどが子供達しかいないのも事実である。
「ふーん。なんだ、配達屋さんか」
 サンタを何かのアルバイトか何かと勘違いしている少年はその地図と住所をじっと眺めて、「分からない」と答えた。
「ふむ、そんなはずは無いんだけど・・・」
 そういってサンタはしばし考え込む。少年が彼の前を去ろうとしたその時に、
「そうだ!ねえ、ちょっとの間でいいから僕の仕事を手伝ってくれないかい?」
「それって、アンタについていけばいいの?」
「そうそう。ついてきて、なにか出来そうなことがあるときだけ手伝ってくれればいいから」
「いやだね」
 そう言って去ろうとする少年にサンタは告げる。
「それは本心かい?」
「本心だよ」
「力があるのに、見て見ぬふりをするのかい?」
「何で知って・・・!?」
「配達先の子どもがプレゼントを貰えなくてもいいの?」
「知るかよっ!俺だって貰えなかったんだっ!そいつだって我慢すればいいじゃないか!」
「君の事情は聞いてないんだよ。でも君は知っているんでしょう?プレゼントが貰えないときの悲しさは」
 そういって、サンタは少年を見つめる。
(そうだ……プレゼントを貰えない悲しさはよく分かる。)

「君の力が必要なんだよ」

「……分かったよ。手伝えばいいんでしょ」
「よし決まり。それじゃ、その住所付近に飛ぶからつかまってね」
 そういって笑顔でサンタは少年の手を握る。瞬間、
「うわあああっ!!」
 彼と少年は空を飛んで、あっという間にさっきサンタがいた教会前にジャンプした。
「よし、それじゃこの辺りをちょっとぐるっと回ってみよう。それで何か気付いたらそのことを教えてくれればいいから」
「よし、じゃねえ。死ぬかと思った」
 どこから見ても奇妙な組み合わせの二人は、とりあえず目的の住所があるべき場所へと足を進める。
「それにしても、アンタ空を飛べるんだ。サンタって本当にいたんだな」
「ん?信じてなかったのかい?」
「あたりまえだろ。そんな胡散臭いもの誰が信じるもんか」
 こと少年にはなおさらだ。
「どうやら信じてくれたみたいだね」
「そりゃあ空を飛ばれたらね」
 二人の足が止まる。彼らの目の前には二軒の家が並んでいる。
「到着だ。地図によるとこの家の間に本来あるべきなんだよねえ」
 どうだろう?とサンタは少年の顔を覗き込む。
「うん、見えるよ。ここが歪んでいる」
 そういって少年が指を指したのは何もない空間。
「やっぱり君を連れて来て正解だったね。君は『視える』のか」
「良く分かったね。っていうかそれを当てにして俺に頼んできたんでしょ」
「ご名答。まあ実は君は垂れ流してるからねえ」
「ったく。普通協力なんてしないよ?」
 そういいながら少年は指をさしている場所を見つめる。
「けどアンタほどじゃないよ。こうやって入り口が視えてそこの出入りが出来るだけだ」

 少年には『渡り鳥』と名づけた不思議な能力がある。
 目に見える、ということはそれだけで意味を持つ。
 この能力に気がついたのはもっと小さいときだったが、この能力の事は秘密にしていた。それは次元の歪みやこことは異なる世界の入り口を見つけ、そこの出入りが可能になる能力である。つまり、サンタが探していた目的地はこの世界からでは見えないところにある、という事だ。
「それじゃ、俺の手を握って。入るから」
「了解っと」
 普通に歪みを手で押し広げて中へと入る。この瞬間が少年にはたまらない。この先には危険があるかもしれない。かつてそういうことも何度か経験した。それでもとてもワクワクするのだ。

 二人が降り立った所は、広い庭だった。さっきまで寒かったのだが、ここはどことなく空気が生温い。建物は無い様だ。花が綺麗に咲いているが、それを綺麗だと素直に思えないのは、ここに来てから聞こえる子どもの泣き声だ。すすり泣くような泣き声が、不気味さを強調している。
「おい、これってちょっとやばいんじゃ」
「まあ大丈夫だよ。僕にまかせたまえ」
その庭の中央に一本の大きな木が植えてある。泣き声はどうやらそこから聞こえているようだった。

 そこには一人の女の子が座っていた。だがその体は全体的に透けている。幽霊というヤツだろう。やはり泣き声はこの子のものだったらしく、その小さな両肩が小さく震えている。
「やあ、こんばんは」
 そんな彼女にいつものようにサンタクロースは話しかけて見せた。けれど女の子は俯いて泣くのを止めない。
「どうして泣いているの?」
 女の子は顔を上げて、呟いた。
「誰も、いなくなったの」
「ぐっ・・・」
 女の子の顔は崩れかかっていて、少年は目をそらしそうになるがすんでのところで立ち止まる。
「独りぼっちになったの。いくら呼んでも誰も来てくれないの…」
「そうかい、寂しかったねぇ、辛かったねぇ。でももう大丈夫だよ、今日は君にプレゼントを持ってきたから」
 そう言いながら、サンタは少女の頭をやさしく撫でる。
「・・・プレゼント?」
「そうそう。なんていったって僕はサンタクロースなんだからねぇ」
「サンタ、クロース……」
「うん、世界中の子供達に笑顔を届けるのが僕の仕事だからね。そうだ。ついでに、とびっきりいい物を見せてあげよう」
「いいもの?」
 少年と少女が声をそろえた。
「うん。もともと、この座標を僕は探していたんだ。この場所さえ分かれば、今年の分は全て捕捉したからね。補足さえすれ僕のは次元とか、世界とかいったものは関係ないからね」
 そう言って、サンタは何かを唱え始めた。少年と少女は、彼の周囲に得体の知れない力が集まっていくのを感じた。
「何をする気だ?」
 ふふん、と得意げに
「魔法だよ」
「魔法?」
 そう聞いた少女にサンタは、
「そう、すっごいからね、瞬きばっかりして見逃さないようにね?」
「担当座標全域捕捉完了。エラー無し。警告無し。そんじゃあいきますか」

―Merry Christmas.

 パチンと、指を鳴らす。その指はそのまま空を指している。二人が空を見上げたその時、夜空に数え切れないほどの光が走っていった。
「わあっ!」
「うおっ!」
 少年と少女はその光景に見とれている。
「―綺麗」
「ふふん、どうだ。すごいでしょ」
 そう語るサンタの顔は物凄く得意げだ。しかし一瞬、足元がふらついたのには彼らは気付かなかった。
おそらく、この光には普通の人は気付けないのだろう。異常を見て、異常を識り、異常の中で生きるもの達にしか見えないものだ。それはサンタが彼らに送る、彼らだけの特別なプレゼントだ。
 そしてたくさん流れる光の本流の中から一滴の雫がこの庭の木の下に落ちてきた。包装された小さな箱だった。
「さぁ、君へのプレゼントだよ」
 箱を開けた少女は、びっくりした顔で、
「お父さん、お母さん!」
 彼女の大切な家族の写真を握り締めている。写真と一緒に手紙も同封されていた。
「もう一人じゃないからね、お父さんもお母さんも君の近くにいるはずだから。もう泣かなくていいんだよ」
 手紙を一通り読んだ少女に向かってサンタが言う。
「―ありがとう、サンタさん」
 そうして最後にそう言って、彼女は光の中に消えていった。

「……なぁ」
「ん?」
「別に俺を連れてこなくてもさ、これくらいアンタ一人で何とかできたよな」
 あの異界の庭からは二人とも出てきて、元の街の教会の屋根の上に座っている。
 ばれてたか、とサンタは頭を掻いている。
「正確には、何とかじゃなくて、余裕でこなせる範囲だけどね。サンタクロースのエースを舐めてもらっちゃあ、困るよ」
「じゃあ、なんで俺を誘ったんだ?」
「ん、ちょっと試したんだ」
「試した?」
「そう。君が十分足る人物かどうかを確かめるためにね」
 そう言って、彼は一通の便箋を取り出して、少年に差し出した。
「これは?」
「僕から君へのプレゼントだ」
「プレゼント?」
 そう言って、少年は渡された便箋を読む。
「君のその能力、子供達の笑顔のために使ってみる気はないかい?」
 それはサンタクロースの紹介状だった。
「今すぐでなくていいんだ。もう少し大きくなった時に、その気があればそこに書かれてるところに行ってみるといい」
少年は驚いた顔でサンタを見つめる。
「いやね、僕はもう今年で引退なんだよ。ちょっと頑張りすぎちゃってね」
「それでこの仕事を始める前にいろいろあって人間を捨てたんだけど、さすがにガタが酷くてね。今のでだいぶ無茶したから、そろそろ死ぬみたいなんだよねえ」
「死ぬって、まじかよ」
 うん、と弾んだ声で、
「でもね、後悔はしてないんだよ」
 そういうサンタの声はとても明るくて穏やかだ。
「これまでたくさんの子供達の笑顔を見てきた。それはもちろん今日のような不思議な例もたくさんあったよ。それでも彼らの笑顔を見るたびに、人間を捨てた事も苦にはならなかったよ」
「そう……あのさ」
「うん?」
「俺に務まるかな?」
「さあね、務まるかもしれないし、務まらないかもしれない。ただ、これから君を必要としている人が出てくるかもしれない」
「そうかな?」
「少なくとも、僕は君の能力が誰かの笑顔に繋がることがあれば良いと願っている。とりあえず、やれるだけやってみればいい」
 そうだ、どうなるかなんて分からない。上手くやれる保証もない。けどやってみなくちゃ、始まらないじゃないか。
「うん、頑張ってみるよ。それで、アンタよりもすごいサンタになってやるよ」
「ははん、それはどうかな?伊達に人間辞めてないからね?僕を抜くのは相当大変だよ?」
「それは、やってみないとわかんないよね」
「はははっ、まぁ君の力は未完成だからねえ。せいぜい頑張りたまえ」
 それから少しして二人は屋根から下りた。
「ちょっと約束した人がいてね。最後に会いに行かないと」
 それじゃここでお別れだ、と言ってサンタは去っていった。
 「間に合うといいな」
 彼の背中を見送りながら、少年は呟いた。
「間に合わせて見せるさ」
 彼は振り返らずにそう言って見えなくなった。


 少年は、すっかり静かになった街を自分の家に向かって歩いていく。ふとサンタに会う前に睨みつけたツリーが視界に入った。
(今年のクリスマスは、悪い事ばっかりじゃなかったな)
「……メリークリスマス」
 そう呟いた少年の声は、誰にも聴かれる事なく街の中に溶けていった。


/Last work 了.

(お題:サンタクロースの贈り物)
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 変なカボチャと別れた後、男はもう一度コンビニに寄り直して、酒を買い直した。
 家に帰る頃には、雲が少し薄くなって、月が見えていた。今日は満月だ。どうりでムズムズするわけだ。家の前には誰もいなかったから一応ぎりぎりセーフ。
 家でびちびちと酒を飲みなおしていたら、玄関のチャイムがなった。

「?だれだろ」

 覗き窓で覗いてみる。知らない女の人が立っていた。


 私は彼女に憧れていた。


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筆者:tone
性別:♂
為人:学生で眼鏡で所謂KYのくせに心はソーダ硝子

でもめげない…多分

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