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ごめん、やっぱ忘れたかも
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 私は彼女が羨ましかった。

 彼女が太陽の光なら私はその影で、彼女が朝なら私は夜。彼女が手に入れられるものの中で私に手に入れられないものは、沢山あった。同じ容姿をしてるのに、同じモノを持っているのに、私はいつも選ばれなくて、彼女はいつも選ばれる。黒い感情が奥底から湧き上がってくる。

 嫌な気分を紛らわせるようにそそくさと部屋の中へ戻る。ふと、足下に落ちている箱に目がいった。そういえば、今日の昼に、小さな小包が届いていた。差出人の名前は書かれていないが、宛先は確かに私の名前になっている。

-同じモノっていったい何のこと?

 その箱を、そっと開けてみる。

「これは、姉さんの?」

 箱の中には小さな手作りの万華鏡。間違いない。これは姉さんが作ったやつだ。彼女は万華鏡を作るのが趣味だった。何故?そう、かつて私は彼女に聞いたことがあった。

「何で万華鏡なんか作ってるの?」

「だってこれ、私たちの**に似てるでしょう?」

 なんだろう。見たら思い出せるだろうか。

 何を?何を思い出すの? ゆっくりと、鏡写しの世界をのぞき込んだ。

「あっ」



 平行世界の旅行。



 思い出した。それが、私と姉の能力。そして、彼女の言葉を思い出す。

「ルールその1。私たちの旅行法では、きっと今いる世界で私と貴方のどちらかが私たちの力に関係なく死んでしまったとき、それは変えられないわ」

「どうして?」

「私たちはあったかもしれない出来事を引き出すことはできるけど、それは私たちが生きていたら、という前提が必要でしょう?だからどちらか片方だけでも死を認識してしまった時点でもう帰ってはこれないの」

 その時、私は納得のいかない顔をしていたが、

「大丈夫よ。その時が来ればきっと分かるわ」

 彼女はそう言った。実際、確かに私は彼女の死を覆そうと試みたが、それはおろか平行世界の旅行すらできなくなっていた。

「そしてルールその2.私たちのどちらかがルール1で死んでしまった場合、生き残った方は多分この旅行ができなくなるわ」

 私と彼女は二人で一つ。個としては別の存在だけれど、深いところでは繋がっている。だから、私たちは片方を通してあったかもしれない結果を引き出している。だから、私は半身を失ったと同時に本当に沢山の物を失ってしまった。

 私じゃない。姉自身が自分の死を認めたのだろう。どうして、その選択肢を選んだのか、今となっては分からない。悲しみに暮れながら、もう一度万華鏡を覗いてみた。そこは変わらず鏡写しに広がるきらきらと輝く世界がある。

-大丈夫よ

 声が聞こえる。懐かしい根拠のない彼女の言葉。時々発する彼女のその根拠のない言葉に何度振り回されてきただろうか。でももうそろそろ重い腰を上げなければならないだろう。

-時間はかかるかもしれないけれど、あなたは、きっと大丈夫よ

「うん、頑張ってみるよ」

 窓際に万華鏡を立てかける。白い月明かりが、彼女と万華鏡を優しく照らしていた。

(END5. TRUE END)
 
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